知られざるアールグレイの歴史と魅力
2025/04/10
紅茶のフレーバー・アールグレイをご存知ですか?紅茶の中でも特に香り高く、世界中で愛されるこのフレーバードティー、当店でも最も人気のある紅茶です。この紅茶の名前の由来は19世紀のイギリス首相、2代目グレイ伯爵から来ています。中国の紅茶に柑橘果実のベルガモットの香りを加えて生まれたこの紅茶は、フルーティで爽やかな風味が特徴。本記事では、紅茶の歴史とともに、アールグレイの魅力を深掘りしていきます。
目次
アールグレイの起源とイギリスの紅茶文化

英国グレイ伯爵と紅茶の歴史
まずはアールグレイの誕生の歴史を見ていきましょう。
アールグレイの名前になっているグレイ伯爵(アール=伯爵)は、19世紀初頭のイギリスで活躍した政治家です。彼の時代、イギリスでは茶が社交の場で重要な役割を果たしていましたが、当時の茶は主に中国から輸入されていました。グレイ伯爵が1830年代に首相を務めたころ、イギリスは中国の使節団が持ち帰った紅茶をとても気に入り、その香りの紅茶を茶商のトワイニングに注文。中国の使節団が持ち帰った紅茶というのが、中国武夷山・正山小種という紅茶で、松柏で燻煙されたスモーキーな香りのする紅茶でした。
正山小種紅茶を飲んだことがある方は想像がつくと思いますが、初めて飲んだ時、正山小種は本当に紅茶なのか?というくらいにスモーキーな香りが強く独特な紅茶です。しかし19世紀当時、中国から運ばれる際に香りが薄れたことと、イギリスの硬水が影響し香りは柔らかく果実のようになりました。この果実のような香りは、中国の「龍眼」という果実の香りに例えられました。さて、この中国紅茶を注文されたトワイニングですが「龍眼」が何かわからなかったので、代わりに柑橘果実「ベルガモット」を茶に着香。こうして生まれたのが世界で最初に作られたフレーバードティー・アールグレイです。(諸説あります)
また茶商のトワイニングはこの時特許を取らなかったため、現在茶葉の種類に関わらずベルガモットが着香されていればアールグレイとして販売できるようになり 今日ブランドや茶葉の個性が光る様々なアールグレイが楽しめるようになりました。

ベルガモットの発見とアールグレイの誕生
アールグレイの誕生には、ベルガモットという果実が欠かせません。この果実は、柑橘系特有の爽やかな香りを持ち、香水や紅茶のフレーバーとして広く利用されています。19世紀、ベルガモットは地中海地方でよく知られる果実でしたが、イギリスでの認知度は低かったため、アールグレイの誕生においては新鮮なインパクトを与えました。チャールズ・グレイ伯爵が特注したベルガモットフレーバーの紅茶は、硬水の影響で香りが和らぎ、非常に飲みやすくなったことから、瞬く間にイギリス全土で人気を博しました。この独特の風味が、アールグレイを紅茶の中でも特別な存在にしているのです。

19世紀の英国と紅茶文化
次にアールグレイが誕生した19世紀に定着したイギリスの紅茶習慣と、イギリスに紅茶が伝わった歴史について触れます。
19世紀のイギリスは、アフタヌーンティーなどの独自の紅茶習慣が確立し紅茶がイギリス人の生活に定着した時代でした。このヴィクトリア時代の社交のための紅茶文化を「ヴィクトリアンティー」といい、紅茶は社交の場での会話の中心となり日常的に楽しむ習慣が広がりました。
次に今でも残るイギリスの紅茶の習慣について。
ブレックファーストティー・イレブンジズ・アフタヌーンティー・ハイティー・アフターディナーティーなど、イギリスの生活習慣に紅茶が深く根付いていることがよくわかります。
ブレックファーストティー… 朝食時。
イレブンジズ… 仕事などがひと段落した午前11時ごろ。
アフタヌーンティー… 午後4時ごろにケーキやスコーン、サンドウィッチなどの軽食と。近代化とともに遅くなる夕食に時間の間に空腹を満たす目的で広まり、主婦が開催するお茶会として社会全体に広まる。
ハイティー… アフタヌーンティーよりも遅い時間。夕食とともに肉類なども一緒に食べるのでミートティーとも。本来はスコットランドの農村地帯や工業地帯での習慣だそう。
アフターディナーティー… 客を招いたディナー後、部屋を変えてくつろぐ際の紅茶。アルコールが入ることも。
他にもブレックファーストティーよりも早い、ベッドで飲むアーリーティーや簡単なお菓子と楽しむ午後のひと時のミッディティーブレイクなど文字通り紅茶と密着したイギリスの生活。
紅茶はイギリスの生活習慣の象徴として、現在でも多くの人々に愛され続けています。

イギリスに紅茶文化を持ち込んだ王妃
イギリスに茶を飲む習慣が定着した歴史を三人の女性を中心に見ていきましょう。
ヨーロッパで一番最初に茶という存在を知ったのは、紅茶といえばのイギリス…ではなくポルトガルです。インド航路をいち早く発見し16世紀の初めに中国にて茶の存在を知りました。しかし1602年にオランダが東インド会社を作ると、オランダが東方貿易を独占。その後オランダを通してイギリスをはじめとしたヨーロッパに茶が広まりました。
この章ではイングランドに紅茶文化をもたらすきっかけとなった王妃キャサリン・オブ・ブラカンザをご紹介しましょう。
1662年、イギリスのチャールズ2世の元へポルトガルから嫁いだキャサリン妃はインド・ボンベイの領有権と大量の砂糖や東洋の家具、そして茶を持参しました。
オランダに東インド諸島における権威を独占させないよう、ポルトガルとイギリスが手を組むための結婚はキャサリン妃にとってあまり幸せな結婚ではなかったようです。異国から嫁いだ上にチャールズ2世は浮気者。世継ぎも出来なかったようで、その苦難や寂しさを紛らわすように紅茶を飲む毎日。しかし当時余程のお金持ちか身分の高い人しか手に入らなかったお茶を、キャサリン妃が客人に振る舞ったことで上流階級の人々の憧れの的となり、茶を嗜む贅沢な習慣がイギリスにもたらされることとなりました。

茶を宮廷に定着させたアン王女
キャサリン妃の次に宮廷に茶を定着させたのが、1702年に戴冠したアン王女。
キャサリン妃のあと、アンは貴族社会に浸透し始めていた茶を飲み、客に茶を振る舞うことを盛んに行ないました。こうして宮廷で茶を飲む文化が「女王の紅茶」として貴族や貴婦人に広まり、貴族社会に定着して行きました。
またアン王女は「ブランデー・アン」と呼ばれるほど、酒好きとしても知られています。アンは生涯に14人もの子供を産みましたが、死産だったり成長することなく亡くなったため王位継承者が残せず、1714年に49歳で一生を終えました。女王を務めるだけでも重圧に加え、次々に子供を亡くす悲しみはアルコールや紅茶で癒せたのでしょうか。

アフタヌーンティーを始めた
第7代ベッドフォード夫人アンナ・マリア
今日各地で普及しているアフタヌーンティー。お皿が3段重ねになっているティースタンドにサンドウィッチやスコーン、ケーキなどを盛り付けたものと紅茶を楽しむこのスタイルは、1845年ごろ第7代ベッドフォード夫人アンナ・マリアが始めました。この頃には中国の紅茶とは別にイギリス人がインドのアッサムで作った紅茶がイギリス国内で出回り始めており、貴族社会で紅茶が盛んに飲まれていました。
当時の貴族はたっぷりとした朝食に、軽いお昼 そして社交の後、午後8時〜9時ごろに夕食をとっていました。軽いランチの後、観劇や音楽会で遅くなりがちな夕食までに空腹を満たすため、午後にお茶とパンや焼き菓子を摂ることを考えたアンナ・マリアが彼女を訪ねてくる客人にも振る舞ったことで社交の場に広がっていきました。
アンナ・マリアのアフタヌーンティーは茶と食べ物を合わせて楽しむもので、それ以前の貴族の高価な茶や茶器を見せびらかすものとは違っていました。このヴィクトリア時代の社交のための紅茶文化を「ヴィクトリアンティー」といい、紅茶は社交の場での会話の中心となり日常的に楽しむ習慣が広がりました。
フレーバーティーの種類

アールグレイは銘柄ではなく
フレーバーティー
アールグレイは今日紅茶の中でも特に日常に浸透しており、あまり紅茶に詳しくなくても名前を聞いたことがある方も多いかもしれません。当店でも一番オーダーの多い紅茶です。
そんなメジャーなアールグレイですが、「アールグレイ」というのは紅茶の銘柄ではなくフレーバーの一種ということをご存知でしょうか。紅茶の銘柄というと、インドならダージリンやアッサム、スリランカならウバ・ディンブラなどその地域で生産されるものを指します。その土地ごとの気候や茶園の位置する高度などで全く個性の異なる紅茶になります。
フレーバーティーというのは様々な銘柄の紅茶や、あるいはそれらをブレンドした紅茶に果物やスパイス・ハーブなどを混ぜたり、香りをつけてより紅茶のバリエーションを豊かにしたものです。アールグレイは先に触れたように、紅茶にベルガモットの香りをつけたものでベースの紅茶に関わらずベルガモットの香りをつけたものはアールグレイと呼ばれます。アールグレイだけでもセイロンティーに香りをつけたものやダージリンがベースになっているもの、中にはハーブティーであるルイボスティーを使用したものなど、多様な味わいが楽しめるのです。
アールグレイはさまざまな種類の紅茶をベースにすることで、その風味をさらに広げることができます。例えば、キームンをベースにしたアールグレイは、繊細で豊かな香りが特徴で、ベルガモットの香りが優しく絡み合います。一方、セイロンティーをベースにしたものは、しっかりとしたコクがあり、ミルクティーにも合うため、濃厚な味わいを好む方におすすめです。ダージリンのアールグレイは、軽やかでフルーティーな香りが特徴で、上品な口当たりが楽しめます。このように、紅茶の種類によってアールグレイの個性が大きく変わるため、自分の好みに合わせて選ぶ楽しみがあります。それぞれの紅茶の特性を活かしたアールグレイは、まさに多彩な味わいが楽しめる一杯です。

紅茶選びの参考に
フレーバーティーの種類を紹介
アールグレイのようなフレーバーティーは製造方法でさらに3種類に分類されます。それぞれの特性を知っておくと、紅茶を選んだり淹れる際の参考になります。
フレーバーティーは大きく
・フレーバード
・ブレンディッド
・センテッド
の3種類に分類されます。
・フレーバード とは、香りのエッセンスを茶葉に直接吹きかけることで香りをつけたものです。香りをつけているだけなので、素材の味はしません。比較的手頃な価格で販売されています。
・ブレンディッド とは、ドライフルーツやスパイス・ハーブを直接茶葉にブレンドしたもので、果実やピール・花びらなどが華やかで見た目も美しい紅茶です。価格はやや高価。
・センテッド とは、匂いを吸収しやすいという茶葉の性質を利用したもので、材料の香りを茶葉に吸わせて作る方法。上質なフレーバーティーで、高価であることが多い。
このように一口にフレーバーティーと言っても、製造方法で味や香り・見た目・価格などがかなり異なります。香りがしっかりついているフレーバードティーはアイスティーにしたり、蒸らし時間を調整してアレンジティーにしたり、ブレンディッドは見た目が華やかなので贈り物に、センテッドは上質で繊細な香りを楽しむためにブラックで… など 用途やシーン、その日の気分に合わせて茶葉を選んだり、紅茶ライフに遊び心を加えてくれるのがフレーバーティーなのです。
アールグレイの他にも、ピーチティーやアップルティー、ミルクとの相性も良いバニラやキャラメルの香りなどアレンジも含めるとその種類は無限大です。ぜひあなたのティータイムを彩るとっておきの一杯を見つけてください。
ここまで、アールグレイがどんな紅茶なのか、歴史やフレーバーティーについても触れながら解説しました。次に、アールグレイを含め紅茶を一番美味しい状態で飲むための淹れ方と保存方法をご説明します。
アールグレイを美味しく飲むために
おいしい紅茶の淹れ方

紅茶の抽出時間と温度設定
紅茶をおいしく淹れるためには、抽出時間と温度の設定が極めて重要です。
まず空気を十分に含んだ新鮮な水(水道水で十分)を使います。水道水のカルキ臭さなどが気になる場合は蛇口に浄水器をつけましょう。ペットボトルに入った水や汲み置きの水などは空気が少ないため、茶葉に注いだ際ジャンピング(茶葉にお湯を注いだ際に起こる、茶葉の上下運動)が上手く起こらず紅茶の風味が上手く引き出せません。
次にお湯を沸かします。強火で熱し、コイン大の気泡がブクブクと立ってくる状態にします。注意したいのは沸かしすぎ。気泡が出る状態が長く続くと、空気が抜けてしまいジャンピングが起こらなくなってしまいます。
お湯が沸いたら、ポットと茶器にお湯を注ぎ温めます。細かいことですが、紅茶を淹れる前にポットをしっかり温めることで抽出している時に温度が下がらず、おいしさを引き出すことができます。
十分にポットが温まったら、お湯を捨て淹れる杯数分の茶葉をメジャースプーンで量って入れます。BOP(ブロークンオレンジペコー)や F(ファニングス)、CTC茶などの茶葉が細かく抽出しやすいタイプや香りの強いフレーバーティーは、気持ち少なめに ダージリンや中国茶に多いOP(オレンジペコー)などの茶葉が大きいタイプはスプーンギリギリにたっぷり盛って量るとバランスよく美味しい紅茶になるように思います。また3杯以上を淹れる場合は、メジャスプーン✖️杯数 よりも少し少なめにします。
そしていよいよポットにお湯を注ぎます。ジャンピングが起こりやすいよう勢いよく注ぐのがコツです。お湯を注いだら蓋とティーコジーを掛け、じっくり蒸らします。蒸らし時間も茶葉の量と同様、茶葉の大きいものは3分以上、細くなるに従って短く2分半〜3分ほど蒸らします。
ただ、茶葉の量や蒸らし時間は茶葉やブレンド・そして好みによって調整が必要なので、あくまで目安です。紅茶やお茶の習慣を無理なく、そして楽しみながら続けるにはあまり神経質にならないことです。好みは人それぞれ違いますから、濃い目にじっくり楽しみたい方は4分ほど蒸らしたり、軽やかな味わいが良い方は短めに2分ほど蒸らすか茶葉を少なめにしたり。
数回淹れてみて、自分が一番美味しいと思える茶葉の量と蒸らし時間を見つけましょう。

紅茶ポットの選び方と使い方
紅茶を楽しむにあたり、紅茶ポットの選び方と使い方も重要な要素です。ポットは素材や形状によって紅茶の風味に影響を与えます。
保温性が良い、陶磁器・ガラス・ホーロー製などを選びましょう。鉄製は紅茶の水色に影響する恐れがあるので避けます。
茶葉がポットの中でジャンピングしやすいよう、丸い形のものが好ましいです。
ティーポットやティーカップはデザインも様々。私は紅茶の水色が確認しやすい白色を選ぶことが多いですが、自宅で使う分であれば好きな色や愛着の湧く柄など使っていて楽しくお茶が飲めるものを選べば良いと思います。
適切なポットや茶器を選ぶことで、より一層紅茶の世界を楽しめます。

紅茶と水の関わり: 水の硬度
水の硬度が紅茶の風味や水色に大きく影響を及ぼすのをご存知ですか。硬度とは水に含まれるカリウムやマグネシウムなどのミネラル含有量を表した数値です。
紅茶の主成分であるタンニンと水に含まれるミネラル分が結びつき、紅茶の色や味・香りを作り出します。
ロンドン、などの硬水で紅茶を淹れると紅茶の色は黒っぽく渋みや香りは控えめになります。色が濃く出るのでミルクティーにすると綺麗なキャラメル色になります。一方で日本の軟水で紅茶を淹れると色は明るくなり香りが立ちやすくなります。軟水は紅茶の個性がわかりやすく、ダージリンなどは日本の軟水の方が繊細な香りが感じられるので美味しく感じるでしょう。
ブレンドの中には、販売する国の水の硬度を考慮しブレンドを調整してあるものもあるので、水と紅茶の関係を知っておくと紅茶を選ぶ際に役に立ちます。

紅茶のストレートとアレンジの楽しみ方
紅茶はそのままストレートで楽しむのも良いですが、アレンジによってさらに楽しみ方が広がります。
まずはストレートでその紅茶の個性を感じてみましょう。濃い目に出やすかったり、香りが格別なもの、柑橘系のニュアンスを感じるもの、渋みの強いもの…など茶葉やブレンドによってキャラクターは様々です。それぞれの紅茶のキャラクターを生かしてアレンジすることで、よりティータイムを豊かに彩ることができます。
紅茶のアレンジとしてはミルクティーや、レモンティーなどのフルーツを加えたフルーツティーなどがありますが、ミルクを加える場合は 例えばアッサムなどのコクがあり風味のしっかりしたものをじっくり蒸らして濃い目に淹れることで、紅茶の風味がミルクに負けず美味しいミルクティーになります。レモンを加えるなら、バランスの良いディンブラやソフトなキャンディ、インドのニルギリなども爽やかさが際立ち、おすすめです。
ミルクティーやレモンティーなどは淹れるのに手間がかかりますが、あらかじめ茶葉にフルーツなどの香りがつけてあったりスパイスやハーブがブレンドされているフレーバーティーならより気軽にいつもと違う紅茶が楽しめます。フレーバーティーを使ってさらにアレンジしたり、お茶としてだけでなくカクテルやお菓子作りなどのティーレシピも含めると、アレンジティーの可能性は無限です。
季節や気分に応じて色々と試すことで、紅茶の新たな魅力を発見しましょう。

ティーバッグでの淹れ方
紅茶の楽しみ方には、ティーバッグとリーフティーの2つのスタイルがあります。
ティーバッグはあらかじめ一杯分の紅茶が紙や不織布・ナイロンメッシュなど包んであり、手軽さが魅力で忙しい朝の時間などでも簡単に紅茶を楽しめます。リーフティーに比べて茶葉の量を量る手間が省けたり、比較的早く抽出できるので、初心者にもおすすめです。
ティーバッグはインスタントなイメージがありますが、丁寧に淹れることでリーフティーにも劣らない本格的な紅茶が楽しめます。
ティーバックで淹れる時のコツは、
①カップをしっかり温めてから淹れること
②お湯を先に入れて、後からティーバッグをゆっくり沈めること
③カップに蓋をしてしっかり蒸らすこと
です。
お湯が先、ティーバッグは後
ティーバッグを先に入れて後からお湯を淹れると、ティーバッグにお湯があたることで茶の繊維質が出てきてしまい飲んだ時のざらつきの原因になったり、ティーバッグがすぐに浮いてきて上手く抽出できなかったりします。お湯を先にカップに注ぎ、後からゆっくり浸すようにティーバッグを入れましょう。
リーフティーと同様、しっかり蒸らす
ティーバッグには早く抽出できるようにCTC製法や細かい茶葉がよく使われていますが、お湯を入れた直後や少し振っただけでは紅茶の色は多少出ても香味を最大限に引き出すことはできません。ティーバッグで淹れる際もリーフティーと同様に、蓋をして規定の時間蒸らすことがポイントになります。蒸らし時間はティーバッグそれぞれで、1〜3分と違いがあるためパッケージや外箱に書いてある蒸らし時間を確認して淹れましょう。
ティーバッグは静かに引き上げ、絞らない
蒸らし終わってティーバッグを取り出す際は、静かにカップから引き上げます。ティースプーンなどでカップに押し付けて絞ってしまうと、余計な渋みや苦味なども出てきてしまいます。
これらのティーバッグで美味しくいれるためのポイントや注意点は、細かいことですが一つ一つ丁寧に守ることで、手軽に かつ美味しい紅茶を飲むことができます。
紅茶の正しい保存方法で風味をキープ

紅茶の保存期限と劣化を防ぐ方法
紅茶は、開封してから時間が経つとともにその風味が劣化してしまいます。より長く、紅茶のおいしさを保つには適切な保存方法が重要です。まず、紅茶の保存期限は、基本的には未開封の状態でリーフティーなら約3年・ティーバッグなら約2年ほどですが、開封後はリーフティーなら2〜3ヶ月、ティーバッグなら1〜2ヶ月のうちに飲み切ることを推奨します。購入する際も飲み切れる量を選びます。
劣化を防ぐためには、湿気や光、空気との接触を避けることがポイントです。特に湿気は紅茶の大敵であり、風味を損なう原因となります。そのため、開封後は密閉性の高い容器に移し替えるか、密閉できる袋に空気を抜いて入れることが効果的です。少しの工夫で紅茶の美味しさを長持ちさせることができます。
保管場所ですが高温多湿を避け、直射日光の当たらない場所を選びます。冷蔵庫は一見適しているように思いますが、紅茶には匂いを吸収しやすいという特徴もあります。食品の入っている冷蔵庫は紅茶に匂いが移ってしまうため、保管場所には適しません。同様の理由から、スパイスなどの香りの強いものの近くも避けましょう。
保存容器は、ガラスなどの光を通すものではなくアルミ缶や陶器製で密封できるものを選びましょう。
こうした細やかな工夫が、紅茶の香りを守り、最高のティータイムを演出する鍵となります
最後までお読みいただきありがとうございました。今回はアールグレイを中心に、フレーバーティーについてや紅茶の淹れ方・保存方法まで触れました。
茶葉や産地のこと、より美味しく飲むためのコツなど知ることでいつものティータイムがより豊かで満足度の高いものになることでしょう。紅茶の世界は奥深く、日常の中でその変化を楽しむことができる飲み物です。
参考文献 一覧
・日本紅茶協会「紅茶の大辞典」成美堂出版 2013 271p.
・磯淵猛 「紅茶辞典」 株式会社新星出版社 2008 222p.
・磯淵猛 「基礎から学ぶ 紅茶のすべて」 株式会社誠文堂新光社 2016 255p.
・日本茶葉研究会 「知識ゼロからの紅茶入門」 株式会社幻冬舎 2005 174p.
・スチュワード麻子 「英国スタイルで楽しむ紅茶 ティータイムのある暮らし」 株式会社河出書房新社 2010 143p