セイロンティーの世界:各産地の特徴とおすすめの一杯
2025/06/03
セイロンティーの世界:各産地の特徴とおすすめの一杯
Ceylon Tea
セイロンティーの世界に足を踏み入れると、その多様な風味と香りに驚かされることでしょう。ディンブラの花のような香り、ウバの強い渋み、ヌワラエリヤの爽やかな味わい、キャンディのまろやかさ、そしてルフナの深いコクなど、各地域の特徴が紅茶に反映されています。本記事では、これらのセイロンティーの魅力を詳しく解説し、あなたのティータイムをより豊かにする一杯を見つけるお手伝いをします。
目次
セイロンティーの世界を探る
各地域の味と香りの違い
スリランカの5大産地を知る
セイロンティーは、スリランカで生産される紅茶のことで、その名は1972年にスリランカ共和国と改称するまでの旧称「セイロン」に由来します。この地域では元々コーヒーの栽培が盛んでしたが、1860年代にスリランカ・キャンディで発生したサビ病がコーヒー産業に壊滅的な打撃を与えてしまいます。その後スコットランド人のジェイムス・テーラーが枯れてしまったコーヒー園に茶木を根付かせ、紅茶の生産に転換されました。
スリランカは、ハイグロウン・ミディアムグロウン・ローグロウンと、茶園のある標高で区分されます。多様な地形と標高によって異なる気候条件が、セイロンティーの独特な風味を生み出す要因となっています。セイロンティーは、ディンブラ、ウバ、ヌワラエリヤ、キャンディ、ルフナ、ウダプッセラワといった地域で栽培され、これらの地域それぞれが異なる特徴を持っています。
この記事ではスリランカの代表的な産地、ウバ・ディンブラ・ヌワラエリヤ・キャンディ・ルフナの5つの産地についてご紹介します。

ウバの渋み
独特な気候が生む味わい
ウバの紅茶はスリランカの中央から南部へ広がる山岳地帯の東側斜面に位置し、標高1400〜1700mの地域で生産されるハイグロウンティーです。ウバの特徴は独特のキレの良い渋みとバラのような香りの中にミントのようなスッと鼻を抜ける芳香があることで、インドのダージリン・中国のキームンと並んで世界三大銘茶の一つに数えられます。特にクオリティーシーズンにあたる7月〜8月には、インド洋からの季節風が、山にぶつかり乾燥した風を運び、茶葉に特有の風味を与えます。この風と霧の組み合わせが、ウバの紅茶にフルーティーでありながら刺激的な渋みをもたらし、バラのような香りを引き立てます。
ウバティーはミルクティーとしても人気で、ミルクを加えることでその渋みがまろやかになり、香りが一層引き立ちます。

ディンブラの紅茶
花のような香り
ディンブラ地域はスリランカの中央山岳地帯の南西部に位置し、標高1200~1600mの高さに茶園が広がるミディアム~ハイグロウンティーです。季節風の影響は受けるものの、一年を通して安定した品質の紅茶が生産されます。ディンブラはオーソドックスなバランスの取れた味わいが魅力で、渋みも強すぎず中程度。標準的な飲みやすい銘柄です。強い個性を持たないことはブレンドやアレンジをする際にメリットとなります。ミルクティーとしても楽しむことができ、その豊かな香りがミルクと絶妙に調和します。

爽やかなヌワラエリヤ
標高の影響を探る
ヌワラエリヤはセイロンティーの中でも特に爽やかな味わいで知られており、茶園は標高1800メートル以上に位置するハイグロウンティーです。その高地特有の冷涼な気候が茶葉に繊細かつさっぱりとした風味を与えます。朝晩の冷涼な気候と日中との気温差が、茶葉の成長を促し、ヌワラエリヤ特有のシャープな口当たりと花のような香りを生み出します。
1~2月にベンガル湾側から吹く冷たい風によってクオリティーシーズンがもたらされます。クオリティーシーズンの青々しく青林檎とミントを思わせる爽やかな香りは、ぜひブラックティーで。ヌワラエリヤの紅茶は、セイロンティーの中でも特に上品で、紅茶愛好家から高く評価されています。

キャンディのまろやかさ
甘味と香りの融合
スリランカの古都・キャンディを中心にその周りの山岳地帯で栽培される、キャンディ。多くは標高500~800mの低地に位置しますが、一部700~800mに位置するのでミディアムグロウンティーとしても区分されます。キャンディ地方は、1年を通して気候の変化が少なく季節感の影響を受けません。安定した品質と、そのまろやかでライトな風味からブレンドを中心に幅広い用途で使用されています。例えばキャンディ紅茶はタンニン含有量が少ないため、アイスティーを作る際に起こりがちなクリームダウン(タンニンとカフェインが結合し白濁する)が起こりにくいので、アイスティーを作るのに打ってつけの銘柄です。紅茶初心者からベテランまで広く愛されている理由は、このバランスの良さにあります。

ルフナの深いコク
深いコクとスモーキーな香り
ルフナ地方の紅茶は、他のセイロンティーと一線を画すその深いコクとスモーキーな香りで知られています。ルフナは標高0~600mに位置するローグロウンティーで、南部の温暖な気候が、紅茶の葉に濃厚な風味をもたらします。あまり馴染みのない銘柄ですが、砂糖を焦がしたカラメルを思わせる香ばしい甘みのある香りとまろやかな渋みは、ぜひ一度お試し頂きたい味わいです。この紅茶は、特にミルクを加えると、そのコクが一層引き立ち、デザート感覚でも楽しむことができます。甘みを加えると、よりリッチで満足感のある一杯に仕上がります。食後のリラックスタイムや午後のひとときにおすすめの紅茶です。ルフナの紅茶は、その独特な味わいで一度飲むと忘れられない体験を提供します。
味わいや栽培地域についてざっくりわかったところで、
それぞれの産地についてより詳しくみていきましょう。
刺激的な渋み、強い個性のウバ

ウバが育まれる自然環境
独特な強い渋みを作り出す、気候と土地
インドのダージリン、中国のキームンと並び世界三大銘茶のひとつであるウバ。
スリランカの中央から南部に広がる山岳地の東側斜面に位置し、ベンガル湾に面した急斜面に茶園があります。7月〜8月にはインド洋からの季節風が山に当たって、冷たく乾いた風が吹き下ろし一気に茶を乾燥させます。この風と霧、強い日差しによりウバ特有のフルーティーな香りと刺激的な渋みが生まれるのです。7月〜8月のクオリティシーズンの茶葉は、世界最高級の紅茶として、高値で取引されます。ウバの強い渋みと濃い水色はミルクティーにぴったりで、イギリスではミルクティーに最も多く使われる紅茶となっています。
またウバという地名は、険しい山や谷に吹く風の音から名付けられたとか。

ウバ紅茶の歴史的背景
今日、デパートの紅茶売り場やスーパー(コンビニで見ることも!)など広く扱われているリプトン紅茶。イエローラベルが有名で、パッケージを見たことのある方も多いと思います。このリプトン紅茶の創業者の"紅茶王"トーマス・リプトンが、スリランカのウバを世界的な紅茶産地にしたのをご存知でしょうか?
トーマス・リプトンが紅茶業を始めて1年経った頃、母親の「生産物は生産者から買いなさい」という教えの下、セイロン島に赴きます。視察ののち、1890年当時半分以上が未開墾だったウバの土地を購入し、積極的に開拓し茶園を作り上げます。紅茶の大量生産のために効率的な栽培方法を研究し、安価に紅茶を供給するため最新の機械を次々に導入しました。こうしてトーマス・リプトンはウバを世界有数の紅茶産地へと育て上げました。リプトン紅茶のキャッチフレーズ「Direct From the Tea Garden to the Tea Pot 茶園から直接ティーポットへ」はウバから始まったのです。

ウバのシーズンと製造方法
ウバは一年を通して生産されていますが、特にインド洋から吹く南西モンスーンの影響を受けた7〜8月がクオリティーシーズンにあたります。ウバの山間部を吹く強い風で枯れてしまわないよう、茶樹は自助努力を始めストレスがかかります。このストレスにより爽やかなメントール香がもたらされるのです。
ウバだけでなくスリランカの紅茶は、BOPが主流。ウバのしっかりした香味を味わうのに最適なグレードです。インドのアッサムやニルギリでは大量生産に適したCTCが主流ですが、ウバ含めスリランカの茶園では今でもオーソドックス製法がほとんどです。ウバに関しては山岳地帯に位置するため、これ以上茶園を開拓するのが難しくそもそも大量生産に向かない、という理由もあるようです。

ウバ紅茶の風味の特徴とおすすめの飲み方
ウバの茶葉は茶褐色、水色は明るいルビーのような真紅色から橙色です。ウバの特徴はなんといっても爽やかで鋭くキレのいい渋みとウバ・フレーバーと呼ばれるバラを思わせる、ミントのような鼻にスッと抜ける独特の香り。
特に7月〜8月のクオリティーシーズの紅茶は青りんごにミントの香りを合わせたような芳香があり、味は刺激的なパンチのある渋み。
ウバのフラワリーで爽快な香りは、ブラックティーで存分に満喫したいところです。
おすすめの飲み方はミルクティー。濃い水色がミルクを入れると綺麗なミルクティーブラウンに。ウバの鋭い渋みがミルクを入れマイルドにすることで柔らぎ、全く新しい一面を楽しめます。
花を思わせる、ディンブラの香り

ディンブラ地域の自然環境
花のような豊かな香りと安定した品質
ディンブラの産地はスリランカの中央山岳部西側斜面に位置しています。標高1100〜1600mに茶園が点在する、ミディアム〜ハイグロウンティーです。
1~2月に季節風が乾いた風を吹かせ、クオリティーシーズンをもたらしますが、それ以外は一年を通して季節による変化はなく、安定した品質の紅茶が生産されています。

スリランカ・ディンブラの歴史
スリランカでは元々コーヒーの栽培が盛んでしたが、1860年ごろからサビ病が流行しコーヒー園に壊滅的な被害が出てしまいます。サビ病とは、菌によって感染し葉を赤く錆びた鉄のように変色させ、幹まで全て枯らしてしまう恐ろしいコーヒーの病です。コーヒーが悉く枯れてしまい、コーヒー農園は経済的にも大打撃を受けて次々に倒産してしまいます。
新しいコーヒーも育たず絶望の淵にいたスリランカの人々を救ったのは、当時コーヒー園で働いていたスコットランド出身のジェイムズ・テーラー。彼は1867年にコーヒーの代わりに紅茶の茶木を根付かせました。苗木を交配させ強い品種をつくり、駄目になってしまったコーヒー園を茶園に作り替えスリランカの人々を救います。
こうしてコーヒー栽培から茶栽培に切り替えられたスリランカ。茶の栽培は低地から高地へ広げられました。1番最初にジェイムズ・テーラーが茶園を作ったのは1967年キャンディでそこから徐々に広がったのですが、ミディアム~ハイグロウンに位置するディンブラは少し遅れて1890年~1900年ごろに紅茶栽培が始まりました。
ヌワラエリヤの爽やかさを堪能しよう

高地ヌワラエリヤが生み出す独特の爽やかさ
高地で育まれる爽やかな一杯
スリランカの中南部。標高1800mと、スリランカの紅茶産地の中で最も標高の高い位置に茶園が広がるヌワラエリア。
日中の強い日差しと、夜間の冷え込みの温度差がヌワラエリア特有の渋みと香りを作り出します。
スリランカのハイグロウンティーならではのフラワリーな香りと、やや発酵が弱いので緑茶を思わせる爽やかな渋みが特徴です。

スリランカ・ヌワラエリヤの歴史
19世紀後半、コーヒー栽培から紅茶栽培に切り替える際に開発されたヌワラエリア。
紅茶栽培が始まるまでは集落もない未開の地だったヌワラエリアを、イギリス人が紅茶を持ち込んだ際に開拓し生まれた町です。またヌワラエリアは高地で朝夕は5~14℃、日中は18~25℃と熱帯の国にしては涼しく過ごしやすい気候であるため、イギリス様式の建物が数多く建てられ「リトルイングランド」と呼ばれる人気のリゾート地になりました。

ヌワラエリヤのシーズン・製造方法
ほぼ年間を通して生産されますが、1月〜2月に季節風の影響を受け香味の充実したクオリティーシーズンがもたらされます。
紅茶は生育環境の違いで味や香りにバリエーションが生まれますが、栽培地の1日の気温差が大きいほど茶葉のタンニン含有量が増えます。タンニンは紅茶の渋みを作り出す成分なので、ヌワラエリアのように標高が高く1日の気温差の大きい地域の紅茶は渋みが強くなる傾向があります。
ヌワラエリア紅茶はBOP(2〜3㎜)タイプが主流ですが、強い渋みに香りが負けないよう、発酵を弱くしたり少しサイズの大きいOPで仕上げるものもあるようです。
また近年、大量生産が可能であるCTC製法を取り入れる産地が増えていますが ヌワラエリアではCTC製法はほとんど行われておらず、昔ながらのオーソドックス製法が守られています。
キャンディのまろやかさ

キャンディ地方の風土と気候
良い意味での弱い個性、アレンジにぴったりなキャンディー
スリランカの中央山脈の中腹あたり、標高500〜800mとルフナに次いで低い位置に茶園が広がっています。茶園の多くは500〜800mのローグロウンティーに分類されますが、一部700〜800mに茶園があるためミディアムグロウンに分類されることもあります。
標高が低く季節風の影響を受けにくく、一年を通して気候の変化が少ないので個性の弱い、平均的な味わいの紅茶が生産されます。個性が弱いというと良くないことのように聞こえますが、裏を返せば品質が安定していて無個性さはブレンドやアレンジをする際に最適です。

スリランカ・キャンディの歴史
かつてコーヒー農園が広がっていたスリランカですが、19世紀後半サビ病によってコーヒーが全滅。その後茶栽培に切り替わったのですが、このキャンディの地こそスリランカで最初に紅茶が作られた場所なのです。1852年にスコットランドからやってきたジェイムズ・テーラーが、枯れてしまったコーヒーの代わりにインド・アッサムから取り寄せた苗木をキャンディの街から30キロ離れた山岳地帯に植え、スリランカで初めての茶園を作りました。スリランカの人々の生活をも救ったジェイムズ・テーラーは、「紅茶の神様」と称えられています。

キャンディのシーズン・製造方法
季節風の影響を受けず、年間を通して気候が穏やかなキャンディはクオリティーシーズンはなく安定した品質の茶葉が収穫されます。
茶葉のグレードはほぼBOPで、CTC製法はわずかに見られます。

キャンディ紅茶の風味の特徴とおすすめの飲み方
キャンディはマイルドな飲み方が特徴で、スリランカの他の銘柄に比べて突出した個性が無くスタンダードな味わいです。紅茶は飲み始めたばかりの時は特に、どれがどの茶葉か・どこの産地か、1杯だけ飲んでも違いがよくわからなかったりします(もちろんそんなことは気にせず、ただ美味しい!と思えれば充分ですが)。 そんな時にキャンディのような平均的な味を基準として持っていると、例えばウバを飲んだらキャンディより渋みが鋭い感じかするな、とかルフナはスモーキーな香りが独特だな、という様に他の銘柄の特徴がより際立って感じられます。また主張が激しすぎない、という点はブレンドやアレンジティーに向いているという利点もあります。
そんなキャンディのおすすめの飲み方は、アイスティー。アイスティーでありがちな失敗、クリームダウン。これは紅茶の温度が下がったり時間が経つと、カフェインとタンニンが結合して牛乳を入れた様に白く濁ってしまう現象です。飲んでも問題はありませんが、アイスティーで味わいたい清涼感が失われてしまうので避けたいところ。
そこでスリランカ・キャンディの出番です。
茶園の標高が低く1日の温度差が少ないローグロウンのキャンディは、タンニンの含有率がハイグロウンティーに比べて少なく クリームダウンが起こりにくいのです。綺麗な紅茶色を残しつつ、すっきりとしたアイスティーが楽しめる銘柄です。
ルフナのコク深さ

ルフナティーのコクを生む土壌と環境
低地で育まれる、どっしりとした味わい
最後にご紹介するスリランカ・ルフナは、これまで登場したどのセイロンティーとも一線を画す独特な味と香りをもっています。
茶園の位置は標高600m以下とスリランカでもっとも標高の低いローグロウンティー。スリランカの最南端で高温多湿な気候が濃い水色とスモーキーな香りを作り出します。
また、ルフナ以外の銘柄は実際の地名ですがルフナは古い王国の名前で、シンハリ語で「南」を意味しています。現在地名としては残っていません。

スリランカ・ルフナの歴史
17世紀中頃、ヨーロッパから支配を受けるまではセイロン島は3つの王様に治められていました。島を大体三等分した北部がヒピティ、西南部がマーヤ、そして南東部をルフナ王国と呼んでおり、これが銘柄名の由来となっています。
ポルトガル、オランダ、次いでイギリスに植民地支配を受け1815年にイギリスの植民地としてセイロンと呼ばれるようになります。
1948年にイギリス自治領として独立しましたが、この時点では全茶園の8割以上をイギリス企業が所有していました。現在の国名スリランカになった1972年のことです。長らく植民地であったスリランカは1972年に脱植民地化をはかるために茶園を国有化しますが、優秀な管理者や技術者が流出してしまいます。
スリランカには、約7割のシンハラ人(スリランカの先住民で仏教徒)と残り約3割のタミル人(南インドから流入した、ヒンドゥー教)がいますが、イギリスの植民地時代ではタミル人が優遇されていました。その反動で1948年独立後、シンハラ人優遇政策が取られた末の民族紛争が起こるなど紅茶を取り巻く環境が安定しませんでしたが、1992年に再民営化により紅茶復興が図られました。意外と最近の話なんですね。

ルフナのシーズン・製造方法
標高の低いルフナは気温の変化が少ないため20日程の周期で年に14〜15回収穫されます。
スリランカ島の最南端に位置するルフナは気温が高く、生葉の大きさがハイグロウンの2倍近く(10cm程になるものも)になります。葉が大きいため、多量の葉汁が出て発酵を促進。これによりどっしりとした渋みと独特なスモーキーな香りが生まれるのです。茶葉のグレードはBOPが中心ですが、一般的なBOPが2〜3㎜であるのに対しルフナBOPは3〜4㎜と大きめのものもあります。これは茶葉が細かければ細かいほど淹れた時に渋みがより多く抽出されるので、渋みを抑えて茶葉の甘みや濃厚さを味わえるようにするための工夫です。
またルフナの製法の特徴として、気温が高い気候で発酵しやすい環境ですが通常よりも長い時間をかけて発酵させる点が挙げられます。同じスリランカのヌワラエリアでは、10分程しか発酵させない紅茶もあるのに対し、ルフナは90~120分とかなり長く発酵に時間をかけています。

ルフナ紅茶の風味の特徴とおすすめの飲み方
ローグロウンの高温な気候と強発酵で作られるルフナは、糖蜜を焦がしたような濃厚な甘味のある香りと深いコク、ユニークなスモーキーな香りが特徴です。他のスリランカの紅茶とはあまりにも系統が違うし、日本ではあまり馴染みのない銘柄ですが一度味わったら強烈な印象が残る紅茶です。どっしりとストロングな味わいですが、その割に渋みは中程度で飲みやすい銘柄です。
ブラックティーでルフナのキャラクターを存分に味わった後は、ぜひミルクティーをお試しください。ルフナは水色もブラッキーな濃い赤色をしていて、ミルクを加えた際のクリームブラウンがとても綺麗ですし 濃厚で個性の強い銘柄なのでミルクを入れても個性が損なわれずマイルドながらも紅茶をしっかり感じることのできるミルクティーを楽しむことができます。
ルフナティーを使った濃厚なミルクティーの作り方
ルフナティーの濃厚な風味を活かしたミルクティーは、とても満足感のある一杯となります。また、当店ではルフナの風味をしっかり抽出するため紅茶とミルクを混ぜるティーウィズミルクではなく、牛乳液で紅茶を煮出すシチュードティーという方法で淹れています。
材料と用意するもの(一杯分、ホットミルクティー)
・ルフナ茶葉 メジャースプーン1杯強〜2杯
(ホールリーフなどサイズの大きい茶葉は2杯近く)
・牛乳 あれば低温殺菌牛乳の方がスッキリ仕上がります。
・水
・蓋のできる手鍋
・ティーストレーナー(茶漉し)
・ティーカップ
・ティーポット
・砂糖(お好みで)
手順
①一杯分の200mlとして水と牛乳を大体1:1の割合で手鍋に入れます。より濃厚な味が好みなら水:牛乳=80ml:120ml 、など好みで調整してください。
②別でやかんにお湯を沸かします。茶葉を小皿に入れ熱湯を茶葉が全て開く程度かけます。ついでにカップとポットも温めておきましょう。
この②の工程が最も重要で、牛乳液に入れる前に少量のお湯で茶葉を開いておくのです。乾いた状態で直接茶葉を牛乳液に入れてしまうと、牛乳のタンパク質であるカゼインが茶葉をコーティングしてしまい上手く抽出できません。
③①の手鍋を火にかけます。鍋の周りが沸々とし、沸騰直前になったら火を止め②であらかじめ開いた茶葉を入れます。軽くかき混ぜ蓋をし、3分〜4分蒸らします。
④十分に蒸らしたらティーポットにティーストレーナーをセットし、漉したら完成。
無糖でも十分ですが、お好みでお砂糖を少し加えるとルフナの風味がより際立って美味しいミルクティーになります。
セイロンティーを楽しもう
最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事ではセイロンの5大産地をご紹介しました。紅茶は香りや味が繊細で最初は味の違いが分かりにくいかもしれません。繰り返し飲んでみたり様々な茶葉にトライすることで、「これはちょっと渋みが強いな」「この間飲んだものと香りが全く違う!」という風に、自分の中に基準ができてきます。自分の好きな紅茶の傾向がわかると紅茶選びも楽しくなりますし、その銘柄の土地の歴史を知ったり紅茶が育まれる環境を頭の中に想像すると一杯の紅茶から世界中へ旅立つことができるような、何気ないいつものティータイムが特別な時間に変わることでしょう。
参考文献 一覧
・日本紅茶協会「紅茶の大辞典」成美堂出版 2013 271p.
・磯淵猛 「紅茶辞典」 株式会社新星出版社 2008 222p.
・磯淵猛 「基礎から学ぶ 紅茶のすべて」 株式会社誠文堂新光社 2016 255p.
・磯淵猛 「紅茶の教科書」 株式会社新星出版社 2023 222p.
・日本茶葉研究会 「知識ゼロからの紅茶入門」 株式会社幻冬舎 2005 174p.
・山本洋子、藤嶋亜弥、羽入美香「新版 厳選紅茶手帖」株式会社世界文化社 2021 106p〜115p